?化学反応を起こすためには、热などのエネルギーが必要です。反応容器に热を伝えるには、火やお汤を使って周りから全体を温める方法が一般的です。
?今回の成果では、电子レンジ加热の原理である「マイクロ波」を用いて「1原子だけ」を加热し、高いエネルギー変换効率で二酸化炭素を有用化合物に変换することに成功しました。
?マイクロ波は再生可能エネルギーとの相性もよく、将来的な二酸化炭素の排出削减に贡献します。
東京大学大学院工学系研究科の石橋 涼 大学院生と岸本 史直 講師、高鍋 和広 教授らによる研究グループは、黑料网大学院理学研究科の谷口 博基 教授、高輝度光科学研究センターの山田 大貴 主幹研究員らと共同で、マイクロ波を用いた加熱技術(注1)によって、高いエネルギー変換効率で二酸化炭素から一酸化炭素を製造する逆水性ガスシフト反応(注2)が進行することを世界で初めて実証しました(図1)。本研究のポイントは、マイクロ波エネルギーをゼオライト触媒(注3)に含まれる単一原子にのみ集中させることで、化学反応に必要なエネルギーを効率的に注入したことにあります。実験室スケールで、通常の加熱方法に比べて「マイクロ波-to-化学反応のエンタルピー変化(注4)」の指標が4倍以上となりました。本成果は、マイクロ波と再生可能エネルギーの親和性の高さによる化学産業電化(注5)と、高効率な二酸化炭素変換の両面から化学工業のグリーントランスフォーメーション(GX)の道筋を強く推し進めるものとして期待されます。
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(注1)マイクロ波を用いた加热
技術一般的に、電子レンジで広く用いられている加熱技術です。光の一種である1 GHz程度の電磁波を物質に照射することで、その対象を発熱させることができます。工業的には窯業の乾燥工程などにも用いられている技術です。近年では化学工業において、二酸化炭素を排出しない化学反応器の加熱手段として注目されています。
(注2)逆水性ガスシフト反応
二酸化炭素と水素を反応させて一酸化炭素と水を得る化学反応です。一酸化炭素は、さまざまな有用化合物の原料となることから化学工业全体で広く用いられています。したがって、地球温暖化の原因となる二酸化炭素から、化学的に有用な物质を作る炭素循环に贡献する反応と言えます。しかし、この反応には大きなエネルギー投入が必要な点が课题となっています。
(注3)ゼオライト触媒と金属イオン活性点、およびケイ素―アルミニウム比
ゼオライトは、アルミニウム?ケイ素?酸素といった地球上にありふれた元素から構成される結晶であり、石油から有用な化学物質を製造するために必要不可欠な、人類社会を支える重要な材料です。原子~分子サイズの極めて小さな細孔(2 nm)を規則的にもっており、この細孔の中に金属イオンを保持することができます。この金属イオンが化学反応を起こすための「活性点」として機能することで、化学反応を進行させることができます。この金属イオン活性点の状態を、ゼオライトを構成するケイ素とアルミニウムの比率を変化させることで制御できるため、今回の研究で探索パラメーターとして扱いました。
(注4)マイクロ波-迟辞-化学反応のエンタルピー変化
本研究を通して世界で初めて定义しました。「化学反応のエンタルピー変化」とは、化学反応における原料と生成物のエネルギーの差を指します。今回実証した逆水性ガスシフト反応では、生成物のほうが高いエネルギーを有しているため、正のエンタルピー変化が起こります(吸热反応)。これは化学反応に连続的なエネルギー投入が必要であることを示しています。今回、「逆水性ガスシフト反応のエンタルピー変化」と「二酸化炭素の転化率」の积と、「マイクロ波発生に必要な电力」の商を、エネルギー変换効率と定义しました。
(注5)化学产业电化
化学工场の装置を、电力(特に再生可能エネルギー由来の电力)で动作させるように置き换えていくことを指します。化学产业においては、原料から製品を得る过程で多くのエネルギーを必要とします。特に加热过程においては、バーナーやボイラーなど化石燃料を燃焼する方法が用いられています。これらの加热方法を电力駆动方式に置き换えていくことで、工场局所での二酸化炭素排出を抑制できることから、地球温暖化対策などの観点で近年注力されています。
雑誌名:Science Advances
題 名:Focused Thermal Energy at Atomic Microwave Antenna Sites for Eco-catalysis
著者名:Ryo Ishibashi, Fuminao Kishimoto*, Tatsushi Yoshioka, Hiroki Yamada, Koki Muraoka, Toshiaki Ina, Hiroki Taniguchi, Akira Nakayama, Toru Wakihara, Kazuhiro Takanabe*
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