?高性能スピントロニクス※1材料として有名な强磁性※2ホイスラー合金※3の一种である颁辞2贵别厂颈と表面弾性波材料※4として有名な圧电体※5ニオブ酸リチウム(尝颈狈产翱3)からなるエピタキシャル※6Co2FeSi/LiNbO3界面マルチフェロイク构造※7を実现。
?スピン波※8の長距離伝播が示唆される低磁気摩擦特性(低ダンピング定数)領域で磁化ダイナミクス (磁化の歳差運動※9)の电界変调に成功。
?表面弾性波を利用したスピン波の生成技术と本研究技术を融合することで、全电界制御型マグノニクスデバイス※10の実现につながる成果。
大阪大学大学院基础工学研究科の山田晋也准教授、宇佐见乔政助教(研究当时)(现:先导的学际研究机构讲师)、浜屋宏平教授、京都工芸繊维大学电気电子工学系の叁浦良雄教授、庆应义塾大学理工学部の能崎幸雄教授、黑料网大学院理学研究科の谷山智康教授らの共同研究グループは、高性能スピントロニクス磁石材料(ハーフメタル材料)であるコバルト(颁辞)基ホイスラー合金磁石(颁辞2FeSi)と表面弾性波材料として有名な圧电体ニオブ酸リチウム(尝颈狈产翱3)からなる界面マルチフェロイク构造を作製することに成功し、ジュール発熱※11のない情报担体として応用が期待されている「スピン波(マグノン)」を利用した全电界制御型マグノニクスデバイスの実现の键となる技术を开発しました。ハーフメタル材料はスピン波の长距离伝搬が示唆される低磁気摩擦特性(低ダンピング定数)を示すため、従来よりも高性能なマグノニクスデバイスを実现できる磁化ダイナミクス(磁化の歳差运动)の电界変调を达成しました(図1)。
磁性体(磁石)中の磁化の歳差运动が波として伝搬するスピン波は、ジュール热を伴わない超低消费电力情报担体として注目されており、「マグノニクス」と呼ばれる新たな研究分野に発展しています。その一方、これまでスピン波の励起(生成)および制御(翱狈/翱贵贵)には、通常、アンテナ构造を用いた交流磁场の印加手法が利用されており、真の超低消费电力マグノニクスデバイスを実现するには、スピン波の励起および制御を全て「电圧印加」で実现する必要がありました。
本研究では、磁性体としてハーフメタル材料で知られるCo基ホイスラー合金磁石の一种である颁辞2贵别厂颈と、表面弾性波材料で有名な圧电体ニオブ酸リチウム(尝颈狈产翱3)からなるエピタキシャル界面マルチフェロイク构造を実証することに成功し(図1左)、スピン波の長距離伝搬が示唆される低ダンピング定数の領域(0.004~0.006)で磁化ダイナミクスを電界で変調することに成功しました(図1右)。これは、磁性体中のスピン波の伝搬距離を電界で制御するための基盤技術の構築を意味します(図2)。
今后、本成果と表面弾性波を利用したスピン波生成技术を融合することで、电界印加のみで动作する真の超低消费电力マグノニクスデバイスの开発に発展する可能性があります。
近年、滨辞罢技术?础滨技术がますます进展する中、半导体素子の発热量の増加とそれに伴う消费电力の爆発的な増加が社会问题となっています。本成果は、ジュール热を伴わない超低消费电力情报担体のスピン波(マグノン)を、省电力で制御するための基盘技术を提供するものです。今后、本成果をデバイス开発へと展开することにより、スピン波(マグノン)を活用した新しい情报処理素子、すなわち「マグノニクスデバイス」の実现に向けて、大きな波及効果が期待されます。
本研究成果に関する情報は、Wiley発行の「Advanced Science」(オンライン:2025年9月18日:日本時間)に掲載されました。
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※1 スピントロニクス
电子の电荷とスピン(角运动量)の両方の自由度を积极的に利用することにより、新机能デバイスの开発を目指している研究分野のこと。
※2 强磁性
物质中の原子の磁気モーメントが同一の方向に揃って整列した状态を强磁性状态と呼び、そのような特性を持つ物质を强磁性体(磁石)と呼ぶ。
※3 ホイスラー合金
构成原子が规则正しく配列した规则合金の一形态であり、その构成元素や规则性に依存して様々な特性を示す。特に、强磁性ホイスラー合金では完全にスピン偏极した状态が理论的に予想されており、高性能なスピントロニクス材料として注目を集めている。
※4 表面弾性波材料
表面弾性波は、固体表面を伝わる弾性波の一种で、エネルギーが表面に集中して伝わる性质を持つ。この表面弾性波を高効率に伝播させられる材料を表面弾性波材料と呼ぶ。これを応用した电子部品は表面弾性波デバイスと呼ばれ、通信端末などに利用されている。
※5 圧电体
圧力を加えた时に物质を构成する原子やイオンの相対位置が変化し、表面にプラスとマイナスの电荷(分极)が生じる现象を圧电効果と呼ぶ。一方、电界印加により物质の形状を変化させることを逆圧电効果と呼ぶ。これらの现象が顕着に现れる物质を圧电体と呼ぶ。圧电体は、机械的変化と电気的変化を互いに変换できるため、振动センサー、圧力センサー、アクチュエータなどに用いられている。
※6 エピタキシャル
単结晶基板上に结晶方位が揃った高品质な薄膜を结晶成长させること。一般に、基板结晶と格子定数が近く原子配列が同じである场合、非常に良质な薄膜が得られる。
※7 界面マルチフェロイク构造
强磁性体と圧电体または强诱电体(圧电体の中でも、自発的に分极が生じ、その自発分极が电界により反転可能な物质)の2层で构成された积层构造で、磁性状态を电界で制御することができる。
※8 スピン波
スピン(磁石)の歳差运动が空间的にずれて波のように伝わっていく现象。この现象を量子力学的に取り扱ったものをマグノンと呼ぶ。
※9 歳差运动
回っているコマが重力の影响で轴を倾けながら、回転轴の先端が円を描くようにゆっくり动く(コマが首を振る)现象のこと。ここでは、磁场中にある磁化ベクトルが外部磁场のまわりを回転する现象のことを指す。
※10 マグノニクスデバイス
マグノン(スピン波)と呼ばれる準粒子を使って情报を処理?伝达する次世代のデバイスのこと。将来の超低消费电力?高速情报処理を実现する可能性を持つ新しいテクノロジーとして期待され、现在急速に発展が进んでいる。
※11 ジュール発热
电気抵抗がある导体に电流を流したときに発生する热のこと。抵抗加热とも呼ばれる。
タイトル:Electric-Field Control of Low Damping Constant in Epitaxial Co2FeSi/LiNbO3 Multiferroic Heterostructures
著者名:Shinya Yamada, Takamasa Usami, Sachio Komori, Yoshio Miura, Kazuto Yamanoi, Yukio Nozaki, Tomoyasu Taniyama, Kohei Hamaya
DOI :
雑誌 : Advanced Science