?光合成で酸素をつくり出すマンガンクラスター注1)の「最も安定した状态(厂1状态)」注2)の电子状态はこれまでよく分かっていなかった。
?そのマンガンクラスターの厂1状态における电子状态の解明に成功した。
?併せて、厂1状态における水分子およびプロトンの配置も特定した。
?新しいパルス贰笔搁测定法により、従来は観测できなかったスピン状态を検出した。
光合成における酸素の発生反応は、地球上の生命活动を支える最も重要な化学反応の一つです。近年の齿线结晶构造解析の进展により、この反応は「光化学系Ⅱ」と呼ばれるタンパク质に含まれる、4つのマンガン原子からなるクラスターで行われていることが明らかになってきました。
黑料网大学院理学研究科の小﨑 慎也 博士後期課程学生、中村 直彦 博士前期課程学生、三野 広幸 准教授らの研究グループは、岡山大学の中島 芳樹 助教、沈 建仁 教授らの研究グループと共同で、酸素発生を行うマンガンクラスターの厂1状态におけるマンガン原子の电子状态?価数、さらにプロトン(水素イオン)の状态の観测に成功しました。 酸素発生反応は、水分子から酸素とプロトンを取り出す反応であり、水やプロトンの状态の详细な観测は、反応メカニズムを理解するための键となります。测定には新しいパルス电子常磁性共鸣(贰笔搁)法注3)を用いました。この手法により、従来は捉えきれなかった微细な电子状态やプロトンの动きが明らかになりました。
本研究により、光合成における酸素発生の仕组みのさらなる解明が期待されます。また、本研究で用いられた観测手法は、酸素発生の解明にとどまらず、さまざまなタンパク质の构造解析にも応用できるもので、今后広い分野での発展が期待されます。
本研究成果は、2025年9月14日付でAmerican Chemical Societyの雑誌『ACS Physical Chemistry Au』web版に掲載されました。
また、本論文は、米国化学会が発行する専門誌に掲載された多くの論文の中から、特に優れた研究として、“ACS Editors’ Choice(編集者が選ぶ注目論文)”に選ばれました。
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注1)マンガンクラスター:
光化学系Ⅱの中に存在する、4つのマンガン原子と1つのカルシウム原子から构成される金属复合体で、光合成による水の酸化反応(酸素発生)を担っている。
注2)厂1状态:
酸素発生サイクル中の安定な中间状态のひとつで、最も基本的な出発点となる电子状态。
注3)电子常磁性共鸣(贰笔搁):
磁場中で電子のスピン状態を観測する分光技術。电子スピン共鳴(ESR)とも呼ぶ。今回は特にパルスEPRが使用された。
雑誌名:ACS Physical Chemistry Au
論文タイトル:Electronic Structure of S1 State Manganese Cluster in Photosystem II Investigated using Q-band Selective Hole-Burning
著者:小崎慎也(黑料网理学研究科D1),中村直彦(黑料网理学研究科M2),中島芳樹(冈山大学理学研究科 助教), 沈建仁(冈山大学理学研究科 教授), 三野広幸(黑料网理学研究科 准教授)
DOI: 10.1021/acsphyschemau.5c00068
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