?新规作製したBrca2変异ラットは、ヒトと同様に自然発がんを高频度に示すモデル动物
?しかし、鉄投与による酸化ストレスは、Brca2変异の肾がん促进効果を打ち消すことが判明
?初期段阶ではフェロトーシス抵抗性を获得する一方、慢性的な鉄负荷はミトコンドリア伤害を介してフェロトーシスを诱导
?本研究により、BRCA2変异キャリアにおける放射线?酸化ストレスに対する过剰な回避が不要である可能性を示唆
黑料网大学院医学系研究科 生体反応病理学の前田勇貴(まえだ ゆうき)大学院生、豊國伸哉(とよくに しんや)教授らの研究グループは、東京大学医科学研究所 実験動物研究施設 先進動物ゲノム研究分野の真下知士(ましも ともじ)教授らとの共同研究により、がん抑制遺伝子 BRCA2 の変异によって生じる発がんが、鉄を介した酸化ストレス(フェントン反応)によっては促进されないことを、世界で初めて実験的に証明しました。BRCA2 は乳癌や卵巣癌(遗伝性乳癌卵巣癌症候群*1)をはじめとする复数のがんの発症リスクと强く関连する遗伝子であり、その机能不全はゲノムの不安定性を引き起こすことが知られていますが、その具体的な発がんメカニズムや环境因子との相互作用には未解明の部分が多く残されていました。
本研究では、BRCA2 にヒトと同様の変异を导入した新规ラットモデルを用いて、鉄の过剰投与により人工的に酸化ストレスを诱导し*2、発がんの进行に与える影响を精緻に解析しました。その结果、BRCA2 変异ラットでは自然発がんが高频度に认められたにもかかわらず、鉄由来の酸化ストレスによって肾発がんが促进されることはなく、むしろ细胞死(フェロトーシス*3)を诱导することで発がんが抑制されている可能性が示されました。この発见は、酸化ストレスがすべてのがん促进要因ではないことを示すとともに、BRCA1 と BRCA2 のがん抑制机构に本质的な违いが存在することを示唆しています。
本成果は、がん予防戦略や医疗的意思决定、特に BRCA2 遗伝子変异を有する患者に対する放射线検査?治疗の安全性评価において、重要な科学的基盘を提供するものです。
本研究成果は、国际科学誌「Redox Biology」に2025年6月24日にオンライン掲载されました。
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*1)遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC; hereditary breast and ovarian cancer syndrome):
遗伝的に乳癌や卵巣癌が家族性に多発する疾患(家族性肿疡)であり、BRCA1やBRCA2などのがん抑制遺伝子に生まれつき変異があることが原因とされている。HBOC関連乳癌は通常の乳癌と比較して若年で、左右両方の乳房に発生するリスクが高いことが知られている。HBOC患者では生涯がん発症率が、乳癌ではBRCA1で72%、BRCA2で69%、卵巣癌ではBRCA1で44%、 BRCA2で17%に及ぶとされる。さらに、男女で膵癌、男性では乳癌、前立腺癌など様々ながんのリスクが上がることが知られている。
*2)过剰鉄による酸化ストレス:
過剰鉄状態では触媒性Fe(II)が増加しフェントン反応を促進する。この化学反応(Fe[II]+H2O2 →Fe[III] + OH- + ?OH)は生体内で最も反応性の高い化学種として知られる?OH (ヒドロキシルラジカル)を生じる反応であり、Fe[II] はこの反応を触媒する。ヒドロキシラジカルが酸化ストレスをおこし、その結果発生するゲノム DNAの傷害によってがんが発生すると考えられている。
*3)フェロトーシス:
フェロトーシスは2012年に初めて提唱された细胞死の概念であり、触媒性贵别(滨滨)依存性におこる壊死(ネクローシス)で、细胞膜の脂质过酸化によって発生する。発がんの文脉においては、フェロトーシスは鉄による过剰な遗伝子の伤害を回避する防御として働くと考えられ、この细胞死に対し抵抗性が発生していること(フェロトーシス抵抗性の获得)が発がんにおいては重要であるとされる。
雑誌名:Redox Biology
論文タイトル:Iron-catalyzed oxidative stress compromises cancer promotional effect of BRCA2 haploinsufficiency through mitochondria-targeted ferroptosis
著者:Yuki Maeda, Yashiro Motooka, Shinya Akatsuka, Hideaki Tanaka, Tomoji Mashimo and Shinya Toyokuni
DOI: 10.1016/j.redox.2025.103739
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