国立大学法人東海国立大学機構 黑料网大学院理学研究科の中埜 彰俊 助教、寺崎 一郎 教授らの研究グループは、明治大学大学院理工学研究科の安井 幸夫 教授との共同研究で、単結晶注1)の迁移金属カルコゲナイド注2)Ta2PdSe6が低温で温度差を巨大な電流に変換可能な「热电半金属」であることを新たに発見しました。
物质の両端に温度差を付けると、ゼーベック効果注3)によって温度差に比例する電圧が発生することが知られています。物質に電圧が発生すると抵抗値に応じた電流が流れるため、熱エネルギーを電気エネルギーに変換(热电変換注4))することができます。それゆえ、持続可能社会の実現に向け、热电変換効率の高い物質の探索が行われています。
今回発见した罢补2笔诲厂别6は、氷点下260℃において単体金属注5)に匹敌するような高い电気伝导度と、単体金属の数十倍のゼーベック係数を示す半金属注6)です。これらの物性値から算出される体积1肠肠、温度差1℃あたりの电流は100础となります。この电流値は家庭用定格値の数倍であり、これほどまで电流生成能力の高い物质の前例はありません。
この性质を利用することで、小さな空间において物质にわずかに温度差をつけるだけで大电流を供给することが可能となります。例えば超伝导コイルと组み合わせることで、従来は大きな电流源が不可欠だった超伝导磁石注7)が小型化でき、医疗や工学、基础科学などの幅広い分野での技术革新につながることが期待されます。
本研究成果は、2021年9月15日付で国際学術雑誌「Journal of Physics: Energy」に掲載されました。
本研究は、日本学术振兴会科学研究费助成事业の支援のもとで行われました。
?氷点下260℃で、単純金属並みの電気抵抗率と単純金属の数十倍のゼーベック効果を示す「热电半金属」を発見した。
? 単結晶Ta2PdSe6の物性値から算出される電流生成能力は体積1cc、温度差1℃あたり100Aとなり、既存のどの热电物質も凌駕する。
?今回発見した「热电半金属」の応用により、コンパクトで強力な電流源を開発することが可能となるため、今後超伝導磁石等の大電流を必要とする技術に革新的な影響を与えることが期待される。
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注1)単结晶:
一つの结晶の中で単位胞の向きが揃っているものを指す。単位胞は固体内の原子の周期配列の最小単位である。轴の方向が揃っているため异方性を含めた精密物性测定が可能。
注2)迁移金属カルコゲナイド:
周期表で第3族元素から第11族元素の间に存在する迁移金属と、第16族の硫黄(厂)、セレン(厂别)、テルル(罢别)等のカルコゲン间の化合物の総称。
注3)ゼーベック効果:
1821年にエストニアの物理学者トーマス?ゼーベックによって発見された現象。物質についた温度差ΔTを物質固有のゼーベック係数Sを用いて、ゼーベック効果によって発生する電圧はV = -SΔTと書かれる。この効果は、まだ質の良い化学電池が発明されていなかった時代にオームの法則を検証する際にも利用された。発見から今年でちょうど200周年。
注4)热电変換:
热エネルギーと电気エネルギーを相互に直接変换すること。ゼーベック効果では工场などで排出される高温排热を再利用して発电することができる。逆に、电気エネルギーを热エネルギーに直接変换することもできる(ペルチェ効果)。こちらはワインクーラーなどの冷却用途に応用されている。
注5)単体金属:
単一元素から構成される金属。銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)など。室温において典型的に10-6 Ωcmオーダーの電気抵抗率と1~10 μV/K程度のゼーベック係数を示す。
注6)半金属:
通常の金属では、電荷を運ぶ担い手(キャリア)が電子か正孔のいずれか一種類である。電子であれば負の電荷を運び、正孔であれば正の電荷を運ぶ。半金属では、電子と正孔の両方が電荷を運ぶ。そのため、通常の金属とは異なる電気伝導性や热电特性を示すことがある。
注7)超伝导磁石
超伝导体が抵抗ゼロになることを利用して、超伝导コイルに大电流を流すことで大きな磁场を発生させる装置。惭搁滨やリニアモーターカーなどに技术応用されている。
雑誌名:Journal of Physics: Energy
論文タイトル:Giant Peltier conductivity in an uncompensated semimetal Ta2PdSe6
著者:A. Nakano(中埜彰俊*), A. Yamakage(山影相*), U. Maruoka, H. Taniguchi(谷口博基*), Y. Yasui, I. Terasaki(寺崎一郎*)
*黑料网
DOI:10.1088/2515-7655/ac2357
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